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舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯 感想②

心伝、終わっちゃったね(cv 阿形吽形)

観劇後に、観劇のみの印象でブログをまとめたかったんですが、貝集め連隊戦をゆるゆるやっていたり、暑さでやる気がでなかったりで大千秋楽も終わってしまいました。言い訳乙。ライブビューイングにて、大千秋楽も見届けましたので、心伝の観劇と大千秋楽までを踏まえた感想をまとめます。

 

youtu.be

https://natalie.mu/stage/news/576891

舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯

脚本・演出:末満健一

 

初日配信鑑賞、大阪公演観劇、大千秋楽ライブビューイングと配信鑑賞。初日配信時の感想はこっち。

charmy-coroge.hatenablog.com

 

夢は願いに、愛は祈りに

ある人は言う「新選組を美しい面だけを見るな」と。ある人は言う「後世の多くの人が新選組のことを想い“物語って”きて、今の新選組がある」と。これは大阪公演観劇前に、京都の新選組ゆかりの地を周った際に、地元の方々から聞いた話です。

心伝は「夢」と「愛」によって清涼感のある作劇となっていますが、新選組には惨たらしい内部粛清が横行していたことにも触れています。血生臭い人斬り集団新選組、それでも彼らに「夢」や「愛」を感じるのは、近藤勇の走馬灯にもあった「誠の武士になることを夢見、志を共にした仲間だったこと」が始まりであったから。新選組の血生臭さにもフォーカスし、その上で「こうだったらいいな」という願いを乗せた物語を紡ぐ心伝が好きです。

なんていうか……史実の近藤勇の斬首は、新選組が辿ってきた暗澹たる部分の因果な末路だとしたら、夢を語ったかつての近藤勇と、彼に続いた者たちの意志と願いの先に心伝を手向けたいと思うんです。心伝を見て、新選組が好きな現代の私たちが泣くのと同時に、どこか空のかなたの彼らが安らかに思えたらいいなと……いやあ、これもやっぱり現代人のエゴか、エゴだとしてもやっぱり祈らずにはいられない。愛ゆえに。

 

早乙女友貴という役者を知る

すごい役者に出会った。

早乙女友貴さんは、舞台『キングダム』の時に初めて見て、一人だけ殺陣レベチがいるなと感想を持った時に知ってはいました。その名前から、早乙女太一さんの弟なんだというのも知りました。なので、沖田総司にキャスティングされたときには、「殺陣の本物を連れてきたな」と、その時点で何か納得させられた感じはありました。あと、心伝の直前には、舞台『結合男子』もチラッと見て、こういう2.5舞台にも出るんだなと知ったりなんなり。

初日配信から、演出も相まって感動した。沖田総司がいるぞと。

沖田総司という人物を知っているわけでもないし、近藤さんや土方さんのように肖像画の残った人物でもない、沖田総司は創作上でしか知らないのだが、天才肌の少年剣士に相応しい人物がそこにいた。また、風貌や素朴な声色も、一文字則宗からのつけたりし「舞」の要素すらも、「沖田総司ってこんな人だと良いな」を詰め込んだ理想形だった。

殺陣や舞などの演者の持ち味である部分が先行する分、大千秋楽は特に早乙女友貴さんに驚かされました。

この方は芝居の人だ。

初日配信以降、不思議な役者だとは感じていました。正直に申し上げると、滑舌の危うさが気になったり、芝居も特別上手いというわけではないという印象でした。でも、感情の緩急が絶妙なのか、技の持ち味もあって、唯一無二の役者であることに間違いないと、不思議な魅力を感じました。大千秋楽では、その不思議な魅力が芝居心だということに気づきました。まさに「体で斬っては駄目です、心で斬るのです」のごとく、芝居力というより芝居心です。

それまで「飄々としていた沖田が、池田屋の走馬灯で加州清光と大和守安定の前で悔しさに声を荒げ泣く」という、感情の爆発に、早乙女友貴演じる沖田総司の何たるやを感じていました。しかし、大千秋楽は、それまでの落ち着いた場面にこそ、沖田総司の強い信念や繊細な心の真髄がありました。沖田総司という人間が抱える悔しさや、限られた時間の中で成し遂げたいまっすぐな意思が、言葉の発し方や視線の鋭さから多く感じました。それを感じるだけの説得力が芝居にあり、「私たちは戦うことでしか己を証明できない」と言い放てば、誰もが納得する殺陣の強さがある。

そんな沖田総司の戦いと散り様で加州清光と大和守安定は、沖田総司新選組を知り、観客である私たちも「新選組は好きですか」という問いに「はい」と応えたくなるのだ……

そう思わせてくれる早乙女友貴さんの芝居心に感服しました。早乙女友貴さん、次のスケジュールを教えてください。有識者の方、オススメの舞台を教えてください。『TRUMP-TRUTH-』と『つむ鴨』は円盤購入済み、『天號星』『薔薇サム2』はゲキシネで見ます。

 

2.5次元舞台とは何たるや

ゲーム理解力がカスなので、慶応甲府の特命調査は全然進められなかったので、有識者によって得た知見なんですが、今回の刀ステはかなり原作準拠なんですね。 というか、なんとなくこの会話は末満さんっぽくないなと思ったところが、概ねゲームシナリオであったものだった。特命調査慶応甲府以外の回想の台詞なども、上手く盛り込まれているんですね。驚きました。

また、甲陽鎮撫隊の各隊長との戦闘も、ゲーム攻略順に同じなんですね。ゲームの時点でちゃんと「この時代に生きている者と死んでいる者」の配置をしていたとは。刀剣乱舞……流石骨太コンテンツ。そして、このゲーム構造を踏まえ、走馬灯として新選組のおなじみのエピソードを盛り込む見せ方、巧過ぎる。何より、監査官の「愛」の話をここまで膨らませたのはあっぱれである。

これは原点回帰というより、2.5舞台見てるぞ!と感じたのが、あのデカい舞台装置を惜しみなく使った、アスレチック殺陣無双。しかも恐るべきオール人力。正直見てるだけでひやひやするし、これが原因かはわかりませんが、アンサンブルさんの怪我もあったし……大事故がないのが一番ですが、あの複雑さを毎公演こなしていたのはすごいなと思いました。甲府城新選組屯所、島原の宴会場、池田屋といろんな場面を再現できるのもよかったなあ。劇的ビフォーアフター、匠の技です。

 

好きだから誉めたいところが多すぎる

見てのとおり全然刀剣男士の話をしてないし、新選組キャストの話もしたい。でもアホほど長くなりそうなので、一旦ここで締めとします。

夢の途中で折れんじゃねえぞ。

 

次のブログできました。

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