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舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯 感想

悲伝で新選組の描写があったあたりから、ぼんやりと「末満さんが描く、刀剣乱舞の世界における新選組が見たい」と思っていたので、情報解禁時より期待値が高くなっていました。配信の1週間前から新選組への気持ちを高めた結果、誇張抜きに10回は泣きました。シリーズ化によって、複雑になっている刀ステではありますが、今回はシンプルで、刀ステ初見さんでもわかりやすい内容となっていたと思います。

 

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https://natalie.mu/stage/news/576891

舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯

脚本・演出:末満健一

 

6月9日東京公演のスイッチング映像配信にて鑑賞。後日、大阪公演にて観劇予定。ひとまず、初見の感想というところでまとめたいと思った次第。観劇後、また感想が変わるかもしれない。

※ストーリーや舞台演出に関するネタバレを含みますので、ご注意ください。

※熱心な刀剣乱舞オタク、歴史オタクというわけではないので、細かい設定や史実をさらいきれていないと思いますので悪しからず。

 

フィクションとしての幕末

私にとって幕末のイメージは、大河ドラマの『新選組!』と『龍馬伝』でほぼ形成されているといっても過言ではない。特に、『龍馬伝』はリアタイでの記憶も鮮明で、刀ステ維伝は『龍馬伝』を彷彿とさせ、刀ステシリーズの中でもぶっちぎりで好きなタイトルです。今回も、心伝への気持ちを高めるべく一週間前に見直したのが、大河ドラマの『新選組!』の総集編でした。もう20年前の大河ドラマですが、色褪せない面白さ、三谷脚本ならではの会話のテンポ感の心地良さや、明るさがとても良かったです。あと、新選組といえば、薄桜鬼シリーズかな。今回の刀剣男士キャストは、薄ミュにもゆかりのある人で並んでいるので、二重の意味でもエモ(ちなみに私は薄ミュと末満さんの縁で、矢崎広さんに新選組隊士にキャスティングされないかなとか妄想を練っていた)。

熱心な人の前では霞ますが、やはり幕末という時代に起こったドラマ性や、幕末フィクションは特に好きだなと感じました。幕末志士たちは、立場や形は違えど、当時の日本を守りたかった人たちだったんだと思います。……あまり史実と重ね合わせ過ぎてもセンシティブになるので、以下はあくまでフィクションとして語ります。

 

これは未だ覚めぬ夢

維伝や綺伝では「死んでしまったことへの後悔」「生きたいと思う願い」が起因となって、歴史改変が起き、史実とは異なる放棄された世界へと変貌しました。今回は、山南敬助が時間遡行軍から、新選組の末路と近藤勇の死に様を知らされたことが起因し、山南が隊を抜け、沖田に殺されることで史実から改変へと分岐させています。では、山南が沖田に殺されることによって始まった改変により、新選組戊辰戦争を超えていく歴史改変となるのか。……というとそうではありません、舞台は奇しくも「慶応甲府」。歴史改変を成した先には、刀剣男士の阻止があることを隊士たちは知っていた。それでも、刀を持ち戦い続ける理由は何か。それは、近藤勇の斬首という史実があることへの反抗だった。

本作が、維伝や綺伝と毛色が違うと感じるのは、新選組の目的は「近藤勇に武士としての死を与えること」や沖田にとっては「新選組の一員として戦い続けること」であったこと。死の直前まで武士で在り続け、武士として死ぬことが、史実での末路を知ってしまったことで強固となった、彼らの信念であり願いだった。しかし、彼らは時間遡行軍と協力し、死んだはずの仲間を生き返らせる小さな改変を続けても、生き続けることにはこだわらなかった。土方の言葉でもあったように、時間遡行軍の存在を良しと思わなかった。時間遡行軍に利用された存在のままでは、それこそ「士道に背く」ことだと思ったからではないでしょうか。それでも、近藤や沖田が武士として生き、武士として死ぬことは、史実の末路を知ったゆえの願いと許しであった。あるいは、後世の我々を含む、新選組を愛した人々の「こうであってほしかった」と願う姿の実現だったとも思いました。「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る*1近藤勇の言葉に持ってきたのも、『新撰組!』であった描写の一つに同じです。また、元々は「井の中の蛙大海を知らず」という言葉のみだったのを、後から「されど空の青さを知る」と付け足された言葉により、一つの新しい文へとなった。まさに「つけたり」し話。

「すべては夢のため、武士よりも武士らしい武士になるという夢のため」「生きている限り、夢の途中」今回の刀ステは、清涼感のあるエゴだなと思いました。放棄された歴史とはいえ、「新選組の夢のため」に多くを巻き込み沢山の屍を生んでいる。だけど、これは新選組のための改変された歴史だから、新選組の夢という儚い美しさだけが写ればいい。新選組という存在が、数多あるフィクションの中で刹那的な青春物語で描かれることが多くあると思い、今回はそういった色に振り切った作品だと思いました。

配信後のTwitter(X)での感想ポストで見かけた内容を拝借しますが、「武士(志士)でないから、士無き「心伝(しでん)」、本編終わりにもう一度サブタイトルを言うことで、誠の「志伝」となった」話だと感じました。*2

 

やっぱり元主と刀剣男士の並びが好き

このブログを書いていたら、この3人の並びの写真が早くも上がってきて、オタクは喜んだ。刀ステにおける、歴史改変に呑み込まれた歴史上の人物たちの葛藤と、自分の刀との邂逅が、毎度毎度色んな形を見せてくれて大好きなんですね。

維伝で少し話が出ていたからこそ、今回は土方と和泉守と堀川の場面に胸躍らせていたわけなんですが。まず、トシがかっこよすぎないか。兼さんも堀川くんも、土方さんに対して、ずっと憧れの眼差し向けているようで、可愛らしかった。沖田組が、語弊を招くかもしれないが、プリキュアと妖精みたいな近い距離感があったので(これはこれでっぽいので可愛い)、土方組は、憧れによるちょっとした距離感すら感じて愛おしかった。

それにしても、土方さんがカッコ良すぎて、お顔立ちも土方歳三肖像画にそっくりだし、何なら山本耕史さんにも似て見えてくる。「かっちゃん」呼びもあるし。直前に『新撰組!』を見て良かったと思いました。

 

他にも萌えどころなどは沢山ありますし、偏った感想しかあげられていませんが、ひとまずここまでとします。観劇はもう少し後になるので、また観劇して書き留めたい感想が増えたら2回目を書くかもしれません。

 

 

*1:刀ステでは青さではなく、高さと言ってましたが、ニュアンス的には同じかな……

*2:こちらの考察を拝借いたしました。

https://fusetter.com/tw/wnWLGYzW#all