「ファンはアーティストの鏡」とはよく言ったもので、同演目の別会場で役者に向かって一方的にな声掛けがあっただとか、某コンサートでは突然観客が舞台上に上がっただとか、某公演では役者に私物を持たせただとか……折しも劇団へのイメージが最悪な中、そのイメージに拍車をかけるように悪質な観客が立て続いている気がします。私個人のポリシーは、「観客もその舞台を作る一員の一人」なので、許せないのですが……前述のとおり、劇団の無頓着さが招いた結果と思わざるを得ないので、本当に最悪な事態を起こす前に、対策ができないものかと思うこの頃です。
さて、そんな中「どうか悪質な観客と鉢合わせることはないように!」と思って観劇した、雪組全国ツアーの感想になります。
https://kageki.hankyu.co.jp/sp/revue/2024/romanesque/index.html
雪組公演
ミュージカル『仮面のロマネスク』〜ラクロ作「危険な関係」より〜
脚本:柴田侑宏 演出:中村暁
ショー・パッショナブル『Gato Bonito!!』〜ガート・ボニート、美しい猫のような男〜
作・演出:藤井大介
豊田市民文化会館のソワレ公演にて観劇。悪質なファンとは鉢合わせることはありませんでしたが、音響が残念極まりなかったです。劇場設計による反響の悪さではなく、明らかに「台詞や歌よりも音楽のが大きくて、台詞と歌が聞こえない」だったので、音響側の音量操作のミスではないかと感じています……ソワレ観劇だったというのに、この事態は何……。あまり記憶が残っていませんが、『はばたけ黄金の翼よ』(2019)の時に同劇場で観劇した時は、台詞が聞こえない!と思ったことはなかったはずなので何とも……
豊田市民文化会館は、2階席の後ろの席でもしっかり見えて、音楽の通りもよかったと思います。ロビーも広く、物販渋滞も対策できていたと思います。ただ駐車場渋滞は起こっていましたが……
『仮面のロマネスク』
この作品は、2017年の花組全国ツアーの映像で見たことがあります。初演は一部だけ見たことがあったかなという感じ。その時から変わらない印象ですけど、ひっどい話ですよね笑 もうあなた達に人の心があるんですか?笑 という感じで。まさに、宝塚のゆめゆめしさと美しさで成り立つ、宝塚らしい作品だなと改めて思いましたし、流石、柴田巨匠と思いました。
本当にひどい話(何度だって言う)ではあるんですけど、久しぶりに通しで見て、面白いなと思い直しましたし、全ツ規模ではちょうど良いぐらいの配役で、再演され続けるだけはあるなあと。まあひどい話ですけど(何度だって言う)。再演といえば、雪組では初演以来の再演っていうのも、何とも感慨深い。一緒に見に行った人は、雪組初演を劇場で観劇したぶりに見たと言っていました。
この話は、ヴァルモン(朝美絢)とメルトゥイユ(夢白あや)が、社交界の色恋を蹴散らす一連のゲームと、翻弄されていく貴族方々や自分達すらもめちゃくちゃになっていく、半ば滑稽な貴族の一部始終が劇としても面白い部分。めちゃくちゃな恋模様を作っていったヴァルモンとメルトゥイユが、最後には革命の爆撃音と共に幕を閉じるまで、完璧だったなと思いました。……とまあ、面白い部分だけが描写されているので、そもそもヴァルモンとメルトゥイユは何故そこまで互いに執着する仲になったのだろうかとか、ジェルクール(咲城けい)への報復のためのゲームとはいうけど、具体的に何が起こったのか分からなかったなとか、聞き落としているかもしれないけど、色々細かい人物背景は見えないよなあとは思い返しました。
キャストの印象を
ヴァルモン / 朝美絢さん。「ひと際注目を集める美貌の貴公子」「魅惑的で婦人達との艶聞が絶えない」この設定がめちゃくちゃハマっている。説得力がすごいよ。朝美さんはずーっと持ち前の美貌が、群を抜いた強みでもあるジェンヌさんだなあと思うのですが、昨今は番手も上がり、落ち着いた雰囲気も出て、その美貌にも重々しさが出たと言いますか……初っ端の振り返った瞬間のオーラたるや素晴らしかったです。朝美さんはとってもナチュラルな芝居をされるタイプだなあと感じているので、トゥールベル(希良々うみ)に接触する場面と、その前後の日常場面のリアル感がグッときました。こうでなければこの最低なゲームは面白くない。
メルトゥイユ / 夢白あやさん。素晴らしかったです。私の思うメルトゥイユでした。最高にケッってなるヴァルモンとのゲームを始める場面の「あ・た・し」が意地悪全開で余裕たっぷりの佇まい最高でした(今さっき97年初演の映像見たら「あたし」をサラッと言ってて、夢白さんの意地悪っぷりを噛み締めた)。今回の『仮面のロマネスク』は特に、メルトゥイユが一歩手前にいて、ヴァルモンがメルトゥイユに翻弄されている感を思わせるパワーバランスをしていたかなと思いました。夢白さんは、当初入団して間もないのにも関わらずめちゃくちゃ押されて、私が若干引くみたいな、劇団のやり方による苦手意識が先行していたジェンヌさんだったんですが……いや、夢白さん自体は絶対的な個性もあって、良い芝居をするトップ娘役たるお人やないかと時を経て実感しました。これは懺悔です。シンプルにビジュアルが好きで舞台写真買おう〜と思いました。何と言うか彼女……あまり宝塚娘役らしからぬお顔立ちというか、最近のトレンド顔だなあという感じ。あいみょんとか小松菜奈のイメージ。
ダンスニー / 縣千さん。本当に縣さんはわんこですよね〜!でもショーは猫なんだけどね〜!笑 昨今の雪組をあまり見ていないので知らないだけなんですが、『海辺のストルーエンセ』もそうだったように、縣さんは明るくて弟感ある役みたいなイメージが固定してしまっている。ダンスニーも、純粋でやや世間知らずで憎めないドジっ子感がハマってて良かったなあと思いました。それにしてもパンフ読んでびっくり、研1ぶりの全国ツアーって!そんなこともあるのかあ〜
ジェルクール / 咲城けいさん。そりゃ私にとっては馴染みないわと思ったのが、『蒼穹の昴』から雪組で、星組だったジェンヌさん。先日『BONNIE & CLYDE』を鑑賞して、良いなあ〜と思いました。出番が少ないのが残念だけども、小憎たらしさとか、何言ってんだお前!感は見事だったと。でももっと違う役で見たいですね〜!
トゥールベル / 希良々うみさん。個人的今回のMVPは希良々さん。ショーでも目立つ位置にいたので、より印象に残りました。何と言っても『仮面のロマネスク』で美味しい役どころだと思いますので、翻弄されっぷりや艶感が魅力的でした! トゥールベルも翻弄されるその前後背景って、いまいち見えないなあって感じがするんですが、ヴァルモンが好奇心を掻き立てるような掴め無さに魅力のある役だと思うので、その配分やバランス感覚がよかったなと。あとは、お歌も上手いので良いジェンヌさんだなあと思いました。
私は「だいきほ」雪組世代なので、ロベールの真那春人さんとか、ローズモンドの杏野このみさんとか、司祭の桜路薫さんとか、ここぞというポジションの中堅ジェンヌさんに安心しました。朝美さん主演の真那さんといえば、個人的には『義経妖狐夢幻桜』なので、久々見たいなあと思ったりなんなり。
比較的若手だと……ちょうどよくチャラチャラしてるのがよかったアゾランの聖海由侑さん、セシルの華純沙那さんは華やかで可愛らしい〜! ……で、お名前が(ついでに役名も)分からないんですが、めちゃくちゃ久城あすさんに似てる若手の男役さんいませんか? 思わず、久城さんこっち振り分けじゃないよな!?とびっくりしてしまった笑 誰だろう〜笑
『Gato Bonito!!』
来てしまったよ……!
情報解禁時に興奮したのはガトボニの再演でした。「だいきほ」世代の私にとっては、1番宝塚で燃え上がってた時期のショーなので、現地では観劇できなかったものの、思い出深いショーです。大好きなんですよね、ガトボニ。あのテンションの高さと熱苦しさが大好きでたまらない。今回は、当時4番手だった朝美さんが真ん中でやるのも、何とも胸熱。初演時に雪組ではなかった、夢白さん、咲城さんを入れて顔ぶれはだいぶ新しくなった印象。ですが中身は、「第5夜 キャット・ラピド」以外は同じ構成で、全ツ用にコンパクト化された感じでした。褐色メイクもかなり薄くなってるのは、全ツ仕様なのか昨今のヅカの方針なのかどっちですかね? ブラックフェイスという意見もあると思うので、今回ぐらいのがラテンショーの褐色メイクとしては良いのかもしれませんね。
……なんですが、前述のとおり音響が悪く、歌が全然聞こえなかったので、ただでさえガトボニといえば、歌唱力ペアの「だいきほ」が魅せたショーの印象があるので、ハンデ以上の残念感が否めなかったです……
でも、心の中で歌を並走(?)させていたのと、視覚的満足感、ガトボニを見ている高揚感で、なんとか楽しさを保つことができました!楽しかった!朝美夢白版ガートボニート!
場面ごとの印象を
初っ端から驚き。第1場の女王猫がまさかの夢白さん! 初演では当時雪組組長だった梨花さんだったので、ここに夢白さんを持ってくるとは。正直、ここは別の娘役さんでも良かったのではと思わなくもないけど、ガートボニートと女王猫で揃えたかったのかな?
そして「エキゾチックナ〜イト!♪ オリエンタルナ〜イト!♪ トロピカルナ〜イト!♪」で縣さんを筆頭に男役さんの揃い踏み。もうここも初演が大好きで……銀橋真ん中から出てくる彩風さんがね、この割とトンチキな歌詞を歌ってもなんか様になっちゃう感じが好きで笑 ところで、初演時のこの歌の「俺のマグマ」は「俺の血潮」に変わってましたね。なんかツボでした。やっぱりダメだったかマグマ。当時も物議醸してましたもんね笑
主題歌の第3場では、シルエットから舞台セット上でゴロンとしているガートボニート・朝美サマ。この主題歌もだーいすきで、音響整った状態でちゃんと朝美さんのお歌聞きたかったなあ。熱く!がテーマなショーではあるけど、正直思ったより朝美さんが、私が過去に見て来た印象の熱さとかギラギラさがなく、抑えてる感じがしたというのか……私が馴染みのある初演の望海さんが熱苦しすぎたので差があるのか笑 熱いショーではあったけど、終始落ち着きが土台にある感じでしたね。
「第2夜 ガート・インテリジェント」は、縣さんと麻花さん!麻花すわんさんは、入団当時から可愛い娘役さんがいる!という印象だったけど、舞台では私はあまり認識がなかったので、ようやくこの子か!という安心感。ここのピンク猫ちゃん、ウイッグがだいぶ変わってましたね。褐色メイクも薄くなって、ウイッグも薄ピンクになってました。「第3夜 キャット・スプル」は、途中の歌手が桜路さんで大喜び。激渋で似合ってたなあ〜
「第4夜 クーラ・キャット」猫祭りの開幕。初演時に朝美さんがギラギラとギラつきまくってたメインクイーンは、咲城さん!私の咲城さんのハイライトはここでした。ギラギラしてて最高でしたね。しかしまあ、初演とまったく同じ場面で、初演時にやっていた人がいる中でやるというのは不思議な感じ笑 そして猫祭り大名行列(短縮版)笑 ここの夢白さんはお衣装が真彩さんの時とはガラッと変わって真っ白!これには驚いて、出てきた時に「あれだよな??」とやや不安になった笑 にゃおにゃおにゃおにゃおにゃーおー♪
……さて、ガトボニで1番面白い場面なんですが……初演時の光景を思い出していただきたい。
赤色の派手派手しい格好のガートボニート(望海)を囲うように、白のバリニーズ(彩風)、青のバーミーズ(彩凪)、紫のソマリ(朝美)、緑のバーマン(永久輝)というわけですよ。ボディラインが出て、背中も大胆に開いた際どめな格好をしていらっしゃる男役の皆さま。仕草も、体のラインも女性的でありながら、ヘアスタイルとダンスは男役のままという……「何やら見ちゃいかんものを見ている」感、ガートボニートきっての「デンジャラス」な場面だと思ってるんですね。ここの彩風さんの可愛さたるや、永遠に語り継ぐ名場面。
……で、今回なんですが、縣さんの白のバリニーズ、良かったとは思うけど、どうしておかっぱウィッグ!!なぜ!!あとやっぱり、少数精鋭とはいえど、バランス的にもう一人は欲しかったな!!咲城さんの紫のソマリとかあってもよかったのでは!?(強欲) ちょっと寂しくなっちゃった……というか、デンジャラス感が物足りなく思いました。
「第5夜 キャット・ラピド」は今回の新演出。初演は久城さん真那さん煌羽さんという、雪組中堅男役の場面でしたが、今回は真那さんを中心に、希良々さんと今作で退団の千早さんの場面に。希良々さんがハンドマイクもってたのジワジワと来たなあ、なぜ。
「第6夜 ガート・ディヴァティメント」黒猫のタンゴの場面。正直これもまったく同じでやるとは思わなかった。望海さんの99回の大健闘場面だったので笑 豊田公演のソワレのタンゴトークは「僕専用の乗り物を探しているんです」(「プリウス!」「クラウン!」「アルファード!」)「いいですねえトヨタ、座り心地が良さそう。でもやっぱり僕は、あなたの膝の上がいい……(目の前のお客さんに空気椅子で座る仕草)ニャー!」という具合に客席をわかせていました!
「第7夜 キャット・ヴィオレッタ」ダイスケショー(に限らずだけども)における、宗教っぽい群舞場面の美学がいまいち汲み取れないまま数年が経っているんですが、今回は夢白さん固定カメラしてて、彼女のダイナミックな動きと、三白眼で殺傷能力高めのキレのある表情が素晴らしくよかったです。カッコよかったなあ。
フィナーレに向かう残りの場面は、雪組の次期体制の光景はこんな感じかなあと思いながら見てました。まだ正式に発表されてないので言及はしませんが。でも流石に、大羽根で孔雀つけて最後に降りてくる朝美さんを見たら、色々感慨深いものがありましたね……! 私ですら雪組に組み替えした時から見ているので、思わず息を呑みました。
全国ツアーも終盤で、観劇した回がソワレだったのもあり、加えて消費カロリー量多いショーのあとというのもあってか、朝美さんのご挨拶はややフワフワしていた様子。無理なく楽しく健康的に公演が続けられるといいなあと願っております。「次はぜひ兵庫県宝塚市、宝塚大劇場にお越しくださいませ」と仰っており、とても重々しい言葉だなあと感じつつも、やはり宝塚の良いところまでは否定できないし、嫌いではないので、気持ち良く観劇できる場になってほしいものだなあと思いました。
実は彩風さんの『ALL BY MYSELF』がかなり気になっているのですが、ライブ配信がどちらとも予定が合わないというポンコツっぷりに打ちひしがれています泣 次の雪組さんは『ベルばら』なんだよなあ。どうするかなあ。