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「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」Rule the Stage -Renegades of Female- 感想

待ってました中王区。昨年夏まで燃え上がり、大変お世話になったヒプステにようやく中王区が登場しました。女だけになろうが、ヒプノシスマイクが原作であり、今まで数多の新しさと熱さを作り上げてきたヒプステが作るのなら、それは紛れもない「舞台ヒプノシスマイク」なんだよなあと、期待通りのもの見せてくれました。

 

youtu.be

https://hypnosismic-stage.com/RoF/

ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」Rule the Stage -Renegades of Female-

脚本:亀田真二郎

演出:植木豪

 

大阪・松下IMPホールにて観劇。JRからの松下IMPホールへのアクセスは、京橋駅より大阪城公園駅のほうが迷わないかなと思いました。

東京公演の品川プリンスホテル クラブeXは円形でしたが、大阪公演ではプロセニアム型のホールに花道とセンターステージを設け、その周りに客席をつける形になっていました。東京公演では、花道やセンターステージのほうを向く座席配置のように見えましたが、大阪公演では多少斜めに向いているのみで、真横座席も基本正面でした。花道に平行な位置だったので、センターステージに移動するとやや後ろを向かなければ見えないという難。

 

中王区とはなんぞや

そもそも、ヒプノシスマイクの世界観はツッコミどころ満載で、中でも中王区とは数多の疑問と矛盾を抱えまくった存在であると思っています。この令和のジェンダー観において、中王区の設定には「どうしてそうなった」と思わざるを得ない。それでも、「femme fatale」以降、中王区には多くのファンがついていることは確かで、そのファンも中王区の矛盾を指摘しつつも、「中王の下に集って」いる。私も中王区が好きだ。

その魅力について改めて考えた。主義主張と行動の矛盾に目を瞑り整理すると、簡単に言ってしまえば「自分のために、強くてカッコよくて可愛さも忘れない女が好きなんだよ~~~」に辿り着いた。そして、創作におけるキャラの役割で見ると、その自由さゆえに愚かしさを遺憾なく発揮しているところに、人間味を感じて好きだなあと思うわけです。願わくば、乙統女さまなんかはきちんと罰してもらいたいし、仄仄は最低最悪の悪女のまま散ってもらいたい。……まあこの辺は過度に期待はせずで。

 

「アンチ中王区」を提示したヒプステが作る中王区

ヒプステのオリジナルストーリーの面白さとは、「アンチ中王区」を土台にした世界観の構築によるところだと思っています。所謂「オリジナルディビジョン」が作り上げてきたところ。……というか、ヒプノシスマイクにおいてあれだけのメインキャラがいながら、中王区政権下の直接の被害者がいないのが甚だ疑問ではあるんですが。今回も、中王区を舞台にした「アンチ中王区」のストーリーで、中王区の開拓者となっていく合歓が、中王区の矛盾と対峙する物語で、流石ヒプステよくやってくれたと感動しました。物語の着地点も、メディアミックスとしてできる範囲でこれまた絶妙。

乙統女さまが「月の音」と対峙し、その被害について身から出た錆と認める一方で、ひるまず屈せず引きもせず、受け止めると言う。その後の詳しい台詞は覚えてませんが、乙統女さまは本当にブレない。これがクーデターを起こし、政権を奪取した現総理大臣の姿か、すげえよ。ちゃんと罰してくれ。

かたやブレがちなのが無花果というキャラクターだと思っています。前政権の男性政治家の妹でありながら、それを知らず事態を招いてしまったのは無花果。合歓に自分の妹の姿を重ねて、甘くなるのも無花果。派手な見た目とは反して、一番素朴で人間臭い感情を持っているのが無花果なんだなと改めて思いました。そんな無花果が好きだ。ちゃんと罰してくれ。

仄仄、コワッ本物かよ、しごできだし最高だったよ。悪女のまま散ってくれ。

亀田チルドレン・ツクヨミ&一愛は素晴らしかった。こういう女の子たちを待っていた。アンチ中王区、そして、合歓の同世代の女の子。一愛と合歓はいつかまた仲良くしてほしいな思わずにはいられなかった。カテコの挨拶といえど「またね」ってどこか寂しげに言う一愛が印象的だったな。合歓よ、「世界を革命する力を!」をするんだ。ちょっと違うか。

 

大蜘蛛弾襄を思わずにはいられなかった

下郎どもの話を失礼。私は中王区も好きだが、糸の会教祖・大蜘蛛弾襄が大好きなんだ。本作では衝撃の事実が描写された。どうやら、前政権の政治家の中には言の葉党に尋問拷問の末に、精神を病んで死んでしまった案件があるらしい。めちゃくちゃだよ中王区、何が血を流す悪しき戦いは終焉を迎え~だよ、自分ら何やってんだよ。……とまあ、中王区ディスはさておき、元官僚で一大宗教組織のトップになり、中王区へ復讐を企てる大蜘蛛弾襄って何。

政治家と官僚じゃ扱いが違ったのかもしれない、官僚は尋問拷問なかったかもしれない、霞が関に一体どれだけの下郎がいると思ってるんだ。でも、大蜘蛛弾襄も何かしらの攻撃を受けた実績があるのかもしれない。劇中では「地位も家族もすべて失った」と言ってた。その果てに作ったものが京都を拠点にした、インチキ一大宗教組織だ。しかもそんなに年月が経ってないはずで……いや、大蜘蛛弾襄って何だったんだ。

何度でも蘇る男、大蜘蛛弾襄。脱獄した燐童ちゃんと一緒に、「実録!中王区の真実」みたいな暴露本を出し、暴露系ユーチューバーとして収入を得る話があるかもしれない。そんな妄想を過らせる、亀田さんの作るH歴の世界はやはり面白いなと再確認したヒプステでした。