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舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」(24年10月)感想

3年目にしてようやく初観劇となりました、ロングランの『呪いの子』に……! かなり楽しみにしていたのですが、初観劇にして「マートル役の急遽変更」&「2幕終盤で舞台機構トラブルの中断・再開」というアクシデントに出くわしてしまい、元々夜が遅いソワレ観劇もあって、帰りの交通機関の時間に間に合わず、私は最後5分ほど観劇できず途中退席をせざるを得ませんでした……

観劇オタクたるもの、一番したくないのが途中退席なので本当に悔しかったです。今回のブログも書くか迷いましたが、初見の感想は別で残したいと思ったので、最後まで見れていませんが感想を残すことにします。 ロングラン公演且つ、複雑な舞台演出の多い舞台なので、今後も怪我や事故無く進められることを願います。

 

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https://www.harrypotter-stage.jp/ 

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」

オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
振付・ステージング:スティーヴン・ホゲット
演出補:コナー・ウィルソン

観劇した回のキャスト(敬称略)
ハリー・ポッター平方元基
ハーマイオニー・グレンジャー:豊田エリー
ロン・ウィーズリー矢崎広
ドラコ・マルフォイ:内田朝陽
ジニー・ポッター:白羽ゆり
アルバス・ポッター:渡邉蒼
スコーピウス・マルフォイ:西野遼
デルフィー:鈴木結里
マクゴナガル校長:榊原郁恵

 

今は無き赤坂BLITZには行ったことあるのですが、赤坂ACTシアターは初めてでした。2階の最後列でもしっかり見える傾斜と、遠すぎない距離感でとても良かったです。劇場空間もロビーも立地もよくて、「ACTシアターを返せ」の気持ちは確かにわかるなあと思いました笑……ACTシアター並の文句なしの劇場が欲しいですね泣

観劇前のことなど

舞台の感想の前に、めちゃくちゃどうでもいい私の日記です。私は『ハリー・ポッター』シリーズを通ってこなかった人間で、大昔に友人に誘われて「死の秘宝 PART1」を映画館で見るも、なんのこっちゃのままで終わってしまい、舞台版ができても正直縁がないかなとは思ってましたが……気になる要因は突如生まれました。 今年からのシーズンは、『ダーウィン・ヤング』の親子コンビの渡邊蒼さんと矢崎広さんの組み合わせで見られるんだと気づき、『ダーウィン・ヤング』欠乏症のオタクは見に行こうと思うようになりました。加えて、フォロワーさんが絶賛しているのもあり、事前に見たほうが良い映画タイトルも教えてもらい万全の体制で観劇に挑むことができました。 ……でも、思い返せば、向井理さんや早霧せいなさんがやっていた時にちょっと気になってはいたんですよね。早霧さん元気かな……泣

というわけで、事前予習した「アズカバンの囚人」と「炎のゴブレット」のみの知識で観劇に挑みましたが、本当にこの2作を予習しておいてよかったです……! 劇中の重要なエピソードや、アイテムはこの2作にあったので、おいてけぼりになることなく、見ることができました。

 

親世代の葛藤と子世代の苦しみ

ハリー&ジニーとアルバス、ドラコとスコーピウス、ハーマイオニー&ロンとローズ、そして、ヴォルデモートとデルフィーという、本作は映画版で主だったメンバーが親世代となり、新たにその子世代が台頭することでできる確執が描かれています。

メインとなるのは、ハリーとアルバスの対立です。かつて、一世を風靡したハリー・ポッターの実の息子アルバスは、その立場と名の重さから父親を避け、反抗的な態度を取るようになる。アルバスのその態度から、ハリーはアルバスへの寄り添い方が空回りするようになり、ついにはアルバスを追い詰めるような言葉も吐いてしまう。そんな中、同じく親との関係で心無い噂が立っているスコーピウスとアルバスが出会い、親交を深めるようになる。アルバスは父親への反抗心の下、スコーピウスと協力してとある過去を変えようとする……といったストーリー。

ハリーの不器用さが痛々しく、どうしてそうなっちゃうかなあと思わずにはいられない。ハリーは生まれて間もなく両親が亡くなり、育て親の環境が悪く冷たい幼少期があった。その後の友人関係や学校の環境が良くても、子を育てる環境が悪いものしか知らなければ、自分が親になっても同じように、子に当たってしまうことを体現していてしんどかったです。まさに、人間は教わったようにしか教えられない論。一幕終盤の「従わせることだ」に傾倒してしまったことも最悪過ぎて、流石に引いちゃったよ。 同じ不器用な親でも、ドラコはスコーピウスとの仲はアルバスとハリーのように険悪では無いと思うから、やはり育った環境なんだなあと思わされる。あの小憎たらしかったドラコ・マルフォイに諭されるハリーよ。ドラコ・マルフォイ、成長したんだな……

あとはデルフィーについてですが、まさかそこのファンキーな小娘がラスボスになるとはとまず驚いたわけですが、デルフィーは親の顔を見ることが叶わず、ハリーは両親の最後の雄姿を見届けることができたのは……なんていうか、切ないなと思ってしまった。マインドが悪役に向きがちな性分。というか、ハリーは見れるんだ!ずっこくね!と思ってしまった。

まさにベストタイトル、「呪いの子」の話であったなと思いました。何処を指して「呪いの子」と言うか、私は子世代はもちろん、親世代であるハリーにも言えるのではと思い、ぜーーーんぶ呪いの子じゃん!!と着地しました。親世代から受け継がれる呪いの話……やっぱり『ダーウィン・ヤング 悪の起源』と親和性がありますね。こちら、再演をお願いします。

一応、私が見れなかった結末については先駆者に教えてもらい、補完できましたが、アルバスとハリーがどうやって和解できたかを見届け、二人の成長譚の部分を深めたいなと思いました。また機会があれば観劇したい。

 

奇跡も、魔法も、あるんだよ

すみません、完全の某不穏台詞を引用してしまいましたが、特に意味はないです。 奇跡はともかく、魔法はありましたね。どうやって見せてるんだ!?という演出の数々に驚かされました。冒頭の早替えから、魔法の描写がとにかく映画のイメージそのままなので、びっくりしました。多分一番びっくりしたのは、客席側の天井から落ちてくるディメンターです。怖すぎ。スコーピウスが変装した姿のハリーからの、本物のハリーなどの転換もめちゃくちゃ早いので、本当にどうやって見せているのやら。

そんな複雑な舞台演出もあって、最終決戦で中断してしまい、魔法が切れてしまったのですが……とにかく怪我や事故がなければ何よりですよ。

 

10代最後の渡邉蒼を見届けて

役者褒めの話をしたいのですが、ほんと皆さん映画の雰囲気そのままだなあとびっくりして、私が見た映画は吹き替えではなく字幕だったんですけど、オリジナルキャストのイメージに近かったので凄いなあと思いました。ロン役の矢崎さんは、呼吸レベルでロンだなと思ったので凄いなと思いました。矢崎さんの茶目っ気のあるタイプも好きなんだよなあと再確認しました。あと、スコーピウスが変装しているハリーの時の平方さんを見て、5年前のSOMLの水色アルヴィンを追いかけ続けてる私の心が救われました*1

さて、ここからは渡邉蒼さんに絞って話をします。(このブログでは敬意を持ち、さん付けで統一しているものの、普段は蒼くんと言っているので変な感じ) 渡邉さんは私は『ダーウィン・ヤング』で初めて見て、凄いなと驚き、知人は『西郷どん』や『フィスト・オブ・ノーススター』から絶賛しているので、とにかく令和の新星だと思っているのですが。なんと、10代最後の姿を見ることができ、なんとも感慨深い気持ちになりました。

そう、彼はついさっきまでティーンエイジャー。若さが説得力を増す幼さや、危なっかしさを感じつつも、芝居の根底には大人の落ち着きがあり、芝居のコントロールが非常に巧いと感じています。芝居や感情のコントロールが達者なので、若さ特有の危なっかしさも、どこか落ち着いて鑑賞できるリアルさがあるんですよね。加えて『呪いの子』ではありませんでしたが、ダンスと歌も海外仕込みでめちゃくちゃ上手い。こりゃあホリプロも放っておけないよなあ。

アルバスでは、肉親への「本当の自分を理解してほしい」故の反発と抵抗と、友人への素直な甘えのバランスが見事で、行動の動機が常に自分の身勝手さが先行し、言動との不一致が起こるチグハグさの挙動も繊細でリアルだなあと思いました。……うーん、芝居の上手さや凄さを褒めたたえたいんですが、言語化って難しいですね。

10代から20代の変化は、どの年代の変化よりも一番大きいのではないかと思います。10代最後の芝居を見ることができてよかったと思うと同時に、やはり渡邉蒼という俳優の今後の躍進に期待したいと思う観劇ができたなと思います。応援しています。(20代になったからって再演できない理由にはならないと思うので、『ダーウィン・ヤング』は早く再演してください。)(渡邉さん、お誕生日に矢崎さんのイベントにゲスト参加し、「ウィンザーノット」も披露したそうで、再演ありますよね?*2

 

ロングランの今後

たまたまアクシデント回に当たってしまったがゆえに感じた、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロングランについての所感です。

本作は上演時間3時間40分(休憩込み)というかなり長い上演時間で、ソワレ公演18時15分開始で、ほぼ22時終演というタイム感です。ちなみに、今回の中断後再開の結果、終演時間は22時半は近かったようで、かなり手痛いなあと思いました。

18時15分開始の上演時間3時間40分では、名古屋着の最終新幹線(22時3分発)には間に合わない時間なので、東海関西エリアの人間は東京宿泊を前提にするか、夜行バスを使わなければいけません。関東圏でも、終電が危うい人はいることでしょう。そもそも、3時間40分の観劇自体が体力勝負なので、夜遅くなるとそれだけで疲労感が積み重なります。

じゃあソワレ公演の開演時間を早めればいいのではないか?と思いますが、おそらく18時15分開始というのは、首都圏の社会人のなかでも17時退勤の人ならギリ間に合う……みたいなライフスタイルを若干考慮した時間設定なのではないかと推察します。3年目に突入したロングラン公演なので、土曜なのにも関わらず結構2階席は開いていましたが、ある程度の集客は考えた時間設定なのでしょう。……こう書くと元も子もない感じがする。

いずれにしても、首都圏外なら泊りを前提にしたスケジュールか、マチネで日帰りかですし、首都圏でもわざわざ夜遅くになるぐらいなら休日の昼間にと思うのではないでしょうか。他のミュージカル・舞台などに比べたらかなりハードルが高いなと実感しました。

あとは料金体系も今ひとつだなと思いました。ずばり10000円以下の座席を増やしてもいいのではないか?です。かなり空いていた2階席後方を、C席列(7000円)を増やせとは思いませんが、B席(12000円)より安い、8~9000円エリアがあったらもう少し集客できるのでは?と思いました。せっかくの質の良い舞台で、ハリー・ポッターのネームバリューもあるので、観劇オタク以外がもっと気軽に観劇できる設計は必要だと感じます。

 

もや〜みたいな終わり方しちゃいましたが、つまり色々勿体無いな!と思うわけです!本当に良かったのと、私は観劇リベンジしたいので、また魔法の世界を楽しめたらなと思います。

 

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